欧州特許出願とは、欧州特許条約(European Patent Convention:EPC)に基づき欧州特許庁(EPO)に対してなされる出願をいいます。EPOによる審査を経て特許付与の決定が得られると、EPCの締約国であるヨーロッパの各国に対する移行手続が可能となります。EPCの締約国は、2019年3月現在38ヶ国であり、複数の国に対し移行手続を行うことにより、1つの出願で複数の国内での特許権を得ることが可能となります。また、EPC締約国ではないものの拡張国(extension state)とされる2ヶ国(ボスニア・ヘルツェゴビナ,モンテネグロ)についても、欧州特許出願により保護を求めることができます。
明細書の作成について
1.印紙代低減のため、クレーム数15以内を目指します。
2.欧州特許出願では、同一カテゴリーについて複数の独立クレームの併存は、例外を除いて認められません。審査効率を上げるために、原出願の中の最重要の独立クレームをメインクレームとし、他の独立クレームやそれに従属するクレームについては、分割出願を想定してサマリ相当欄に記載しておくのが良いと考えています。
3.米国特許出願とは異なり、実施の形態に記載されている下位の用語を根拠にして上位概念化したクレームを、補正で追加することは認められません。そのため、上位概念化したクレームの作成が可能か否か、出願時に検討します。ただし、追加したクレームの優先権が有効か否かについては、問題のあるところです。
4.米国特許出願と異なり、ミーンズ・プラス・ファンクション(MPF)形式のクレーム(meansクレーム)について、権利範囲の制限的解釈はありません。むしろ積極的にmeansクレームにすべきです。
5.米国特許出願のクレームと異なり、英語は文法重視です。
6.多数項従属項に従属する多数項従属項が認められています。
中間処理について
1.欧州特許出願の中間処理では、単一性違反により特定のクレームのサーチしかなされていない場合に、サーチされていないクレームに基づくクレームの減縮は認められません。ただし、サーチされていない従属クレームが、サーチされたメインクレームの限定要素になり得る場合があり、その部分で審査官との協議が必要となることがあります。
2.構成要件羅列型のクレームであった場合に、two part formに書き改めるように要求されることがあります。
3.メインクレームよりは狭いが実施の形態よりは広い概念(中間概念)を創出するようなクレームの補正は認められません。