米国で特許権を取得するためには、米国に直接特許出願を行うことも可能ですが、通常は日本での出願に基づきパリ条約による優先権を主張して出願を行います。また、PCT出願を米国に国内移行することや、PCT出願の国内移行手続を飛び越して、継続出願による移行(バイパス出願)を行うことも可能です。PCT出願の国内移行については、PCT出願のページをご参照下さい。
明細書作成について
1.米国特許出願では明細書は英語で記載されますので、英文法に準拠するのは当然ですが、ときには「文法無視・内容重視」が必要な場合があります。例えば、クレームで、one end, another endと初めて記述した後、次に記述するときには、the one end, the another endとします。“another end”が一つの用語となっているため、antecedentの観点からthe other endとすべきではありません。
2.クレームで、一つの構成要件Aを記載し、次に、別の構成要件Bを記載するときに、Aで記載していないA1の構成をBで初めて書くことは、プロフェッショナルなクレーム・ドラフティングとは言えません。例えば、Bの説明の中で「Aの一端に接続されたB1」という記述があるとき、「Aの一端」については、予めAの記述のなかで記載しておくのが適切です。従って、Bの記述ではB1 connected to the one endと記述するのがよく、B1 connected to one end of the Aと記載するのはよくありません。
3.クレームする内容には図面の存在が必要です。原日本出願では図面がないのにクレームされている、という場合がありますが、米国出願するときは、図面を補う必要があります。もちろん、新しい図面を追加する場合は、優先権を考慮する必要があります。
4.Backgroundの欄には、日本の明細書と整合させられない事情があります。
5.米国特許出願の補正においては、実施の形態に記載されている下位の用語を根拠にして、クレームで上位の用語を用いても、新規事項とはなりません。同様な趣旨から、原日本出願のクレームに上位概念に相当するクレームがない場合に、米国出願時に上位概念のクレームを追加しても、優先権のうえで問題にならないと考えています。
6.審査は判例法に基づきます。米国のMPEP(Manual of Patent Examining Procedure:審査基準)は、判例の変遷に応じて頻繁に改訂されます。弊所では、判例を注視して基準に沿った明細書づくりに努めています。
7.原出願にある多数項従属形式のクレームを単数項従属にするように書き改めます。また、独立クレームは最大3個まで、クレーム総数20以内を目指します。いずれも印紙代低減のためです。
中間処理について
1.米国特許出願の中間処理では、延長費用は月が増す毎に高額となるため、可能な限り延長なしで済むように、クライアント様が答え易いような対応案づくりを目指しています。
2.継続出願の指示とすべきところを、RCE(Request for Continued Examination:継続審査要求)や補正で対処した場合、その分費用が無駄になります。このような無駄を省くべく、弊所では両者の見極めに努めています。また、Restriction Requirement(限定要求)で非選択のクレームについても、分割出願要否のウォッチングをしています。
3.現地代理人が提出した補正書、意見書の誤りをチェックします。
4.IDSには審査段階に応じて極力注意を払います。関連出願についてもウォッチングしています。
5.米国事務所や米国特許庁は比較的事務処理が苦手のようです。弊所事務部門では、現地事務所のミス、現地特許庁のミスをチェックします。例えば、IDS提出書類における公報番号の誤記、番号の漏れ、Application data sheet の誤記、Letters Patentの誤記などです。